貿易事務の就職に有利な資格・検定試験 | 知りたい!貿易事務のこと | リバティーのお役立ち通信

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貿易事務の就職に有利な資格・検定試験

貿易事務の仕事は、製品の輸出・輸入に必要な事務手続きを行うことです。
海外の取引先とやり取りしながら、煩雑な手続きを行うため、事務職の中でも特に専門知識が求められる仕事になります。そのため、就職や転職においては、専門知識・スキルの証明となる資格を持っていることで、企業の採用意欲を高めることができます。
本記事では、貿易事務職への就職・転職を目指すうえで、持っていると役立つ資格をご紹介します。

貿易事務の就職に資格は必要?

結論から言うと、貿易事務の仕事をするにあたり、必須資格はありません。
貿易知識のない未経験者を採用している企業はありますし、現在、貿易事務職に就いている人たちの中にも、資格を持たずに活躍している人はたくさんいます。
ただし、資格が持っているのといないのとでは、持っている方が就職に有利に働くことは間違いありません。

特に、
・未経験から貿易事務の仕事に就職したい人
・現在貿易事務の仕事をしていて、キャリアアップを目指す人
にとっては、資格を取得することで、就職のアドバンテージになったり、これまでのスキルの証明になります。

また、資格取得前でも、資格取得を目指して積極的に勉強していることは、履歴書上でアピールすることができます。未経験者の募集の中には「資格勉強中の方歓迎!」と書かれている求人情報もあるので、採用選考においてプラスになるでしょう。

貿易事務の仕事に必要な3つの知識・スキル

貿易事務の仕事内容は、商社やメーカーなどが商品を海外へ輸出入する際に必要な事務手続きを行うことです。そのため、主に3種類の知識・スキルが求められます。

①海外の取引先とのやり取りに必要な英語力
貿易実務で取り扱う書類は、ほとんどが英文で作成されています。また、海外の取引先とのやり取りでは、電話もメールも基本的に英語が中心となります。そのため、読み書きや会話が問題なくできるレベルの英語力が求められます。企業によっては、英語以外の語学力を活かせる場面もあります。

②貿易実務の知識・ノウハウ
商品の輸出入は貿易事務で作成した書類をもとに行われます。そのため、各種書類は貿易関連の法律に則り、正確かつスピーディーに作成しなければなりません。
貿易事務の仕事をスムーズにこなしていくには、輸出・輸入の流れや貿易関連の法律など、専門知識が必要になります。

③書類作成などに必要な事務処理能力(PCスキル)
書類作成業務や貨物の出荷・納品物の管理業務など、貿易事務の仕事は基本的にパソコンを使って行います。
特に、ExcelやWordはよく使われるので、スムーズに操作できるよう、一定以上のPCスキルがあることが望ましいです。

貿易事務の就職に有利な資格は?

先に述べたように、貿易事務の仕事には「英語力」「貿易知識」「PCスキル」の3つが求められます。
貿易事務の経験者も未経験者も、これらのスキルを客観的に証明できる資格を持っていると、就職や転職を行う際に有利になったり、就職先の選択肢が広がったりします。

以下では、貿易事務に就職・転職に役立つ資格や検定を、スキル別にご紹介します。

* 英語系で有利な資格

TOEIC(R) Listening & Reading Test
「TOEIC」は、社会人の英語力を測るものとして、最もポピュラーな試験です。貿易事務に限らず、多くの国際的な企業が受験を推奨しています。
合格・不合格という形ではなく、10点~990点のスコアで測定され、スコアが高いほど英語力があると評価されます。試験はマークシート方式で行われ、リスニング(約45分間・100問)とリーディング(75分間・100問)で、それぞれ495点ずつの配点です。

貿易事務の応募資格としては、スコア600点以上がひとつの基準となっていますので、貿易事務への転職を考えているなら、まずは600点を目標にすると良いでしょう。
なお、一般的には、“現在の英語力”を証明するものとしては、過去2年以内のスコアが有効だとされていますので、受験から年数が経過している場合は再度受験し直すことをお奨めします。

日商ビジネス英語検定
「日商ビジネス英語」は商工会議所が主催している検定試験です。先述の「TOEIC」がリスニングとリーディングのスキルを測定するのに対し、「日商ビジネス英語」では、英文書類の作成に必要なライティング能力を重視しています。
また、「日商ビジネス英語」の試験内容には、「インボイス(商業送り状)」や「パッキングリスト(梱包明細書)」などの貿易関連書類、海外取引を行う企業で使われるビジネス文書なども多く出題されるため、英語力だけでなく、貿易実務の知識もアピールすることができます。
貿易事務職を目指す人にとっては、英語力と貿易知識を同時にアピールできる試験だと言えます。

試験の難易度は3級~1級まで3段階に分かれます。

<3級>
英語での基礎的なビジネスコミュニケーションが可能なレベル。
英文レターや英文メール、英文FAXなど、英語でのビジネス文書の作成、貿易書類の基本など、海外取引において最低限必要となる基礎的な内容が出題される。

<2級>
実務的な英語文書の作成ができるレベル。
海外企業との取引で実際に使われている英文メールや企画書、報告書、貿易関連書類についての問題が出題される。

<1級>
豊富な貿易取引経験や英語の実務経験があるレベル。
英語力とビジネス知識の両方が問われるため、ライティングスキルに加え、貿易に関する幅広い知識が必要。
市況レポートに基づく状況分析、契約書作成、プレゼンテーションなどの問題が出題される。

* 貿易実務・貿易関連で有利な資格

貿易実務検定
「貿易実務検定」は、日本貿易実務検定協会が主催する、貿易実務の知識や能力を測る検定試験です。現場でも必須の知識である、貿易の専門用語、輸出入の取引の流れ、各書類の役割に関する問題などが出題されます。
民間資格ですが、貿易の現場でも広く認知されており、貿易事務の仕事に就くうえで企業への大きなアピール材料になります。

試験の難易度はC級~A級の3種類に分かれています。
どれも受験資格はなく誰でも受験できますが、貿易実務未経験の場合はC級を目標とし、B級~A級は実務経験を積みながらスキルアップとして受験するのが良いでしょう。

<C級>
定型業務をこなすのに必要な程度の実務能力・知識があるレベル。
「貿易実務」と「貿易実務英語」から出題される。合格率は50~60%。

<B級>
貿易実務経験者の中堅層レベル。「貿易実務」と「貿易実務英語」に加え、「貿易マーケティング」からも出題がある。合格率は40~50%。

<A級>
貿易実務において判断業務を行う実力があるレベル。出題科目はB級と同様。合格率は30%前後。


通関士
貿易関連の資格では唯一の国家資格で、貨物の輸出入の際に必要な税関へ輸出入品の申告などの「通関手続き」を行うのに必須になります。試験内容は、通関業法や関税法などの法律知識と、税関への申告に必要な書類作成能力などです。
「通関士」として働くには必須の資格ですが、商社や貿易会社の貿易事務職を目指す人にとっては、必須ではありません。
合格率10%~15%程度の難関資格なので、貿易事務職の人の中でも、「貿易の世界でキャリアアップしていきたい」、「貿易のスペシャリストを目指したい」という人に向いています。


AIBA認定貿易アドバイザー試験
「AIBA認定貿易アドバイザー」は、AIBA貿易アドバイザー協会(通称:AIBA)によって認定される資格です。貿易のスペシャリストとして、海外取引を希望する中小企業へのコンサルティングが行える人材を目指す試験です。
試験に合格し、AIBAに入会すると、最新の国際情勢や貿易についての情報を閲覧できます。また、AIBAから貿易関連の仕事の紹介もあるため、貿易業務で独立・起業を目指す人にも有効な資格です。

原則3年以上の国際ビジネス関連業務の経験者でないと受験資格がなく、1次・2次の2回の試験の合格が必要になるため、合格までのハードルは高いといえます。
貿易事務の就職のために資格取得を目指す場合には、他の資格を検討する方が良いかもしれません。


IATA/FIATAディプロマ試験
ディプロマは、航空貨物運送にかかわる業務全般をこなします。「IATA/FIATAディプロマ試験」は、国際航空運送協会(IATA)と国際貨物輸送業者協会連合会(FIATA)が共同で行っている国際資格試験で、世界80ヶ国で通用する国際資格です。
航空貨物を取り扱う航空貨物代理店などで需要の高い資格です。

国際資格ということもあり、全世界共通の問題が英語で出題されます。その点で、難易度はやや高めだといえます。
基礎コースと危険物コースがあり、危険物コースは2日半の講習の受講が必要になります。

* PCスキルに関する有利な資格

マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
「マイクロソフトオフィス スペシャリスト(MOS)」は、ExcelやWordといったマイクロソフトオフィスの操作スキルを証明する資格です。
試験科目は「Excel」「Word」「PowerPoint」などのソフト別で分かれており、試験の難易度によって、「スペシャリストレベル(一般)」と「エキスパートレベル(上級)」の2種類があります。
貿易事務に必要なPCスキルとしては、ExcelとWordのスペシャリストレベル(一般)を取得しておけば十分です。
PCスキルは貿易事務に限らず、さまざまな仕事で役立つので、MOSの取得を目指して勉強しておいて損はないでしょう。

まとめ:貿易事務の資格を取るならまずはTOEICから

ここまで、貿易事務の仕事に必要な3つのスキルとそれぞれの資格についてご紹介しました。
就職・転職に備えて資格の勉強をしておくことで、就職時に有利になるだけでなく、貿易事務の仕事への理解も深まります。未経験の人にとっては、貿易事務の仕事が自分に合っているかどうかの確認にもなるでしょう。

ただし、同時に色んな資格の勉強をするのは難しいので、優先順位を付けて勉強することも大切です。
何の勉強をすれば良いのか迷う場合は、まずは「TOEIC」で600点以上を取ることを目指しましょう。TOEICで高得点を取れれば、貿易知識やPCスキルのない未経験者でも、貿易事務への就職の道が開けます。というのも、「貿易知識」「PCスキル」と異なり、「英語力」は入社後に実務を通じて伸ばしていくことが難しいからです。

現在のご自身のスキルに合わせて、優先順位を決めてチャレンジしてみてください。